■薬剤師パキスタンを走る■ 下     2002/02/23 東奥日報 25面

百聞は一見にしかず 〜お金だけではない支援


クエットしないの「チャハナ(喫茶店)」でチャイを飲む武政さん=1月28日

 たかが二週間、されど二週間。これが、アフガン難民キャンプを中心とした調査旅行を終えた町田隊長以下全員の偽らざる感想だ。日本のテレビ報道ではなかなかお目にかかれない事実をいくつか目にしたからだ。
  まず「お金だけの支援の日本」という批判を恥じることはない。実に多くの日本人が難民支援に大活躍している姿をこの目で見てきた。

もっと現地に行こう

 UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)フィールドオフィサーのS氏。福岡県出身で、コソボやミャンマーをわたり歩いてきたつわものだ。アフガン国境付近のチャマン難民キャンプでの会議。事務所の中庭で各国のNGO(非政府組織)たちと車座になってテキパキと本日の行動を英語で打ち合わせる。的確な指示とユーモア。スタッフの信頼も厚い。
  医療支援に奮闘するAMDA(アジア医師連絡協議会)のボランティア看護婦Kさん。彼女は臨床検査技師の資格も持つので、難民の看護のほか現地の技術スタッフ養成にも大活躍だ。まだまだ他にもいる。日本人は「勤勉、謙虚、ウソをつかない」と、難民はもとより、現地の人にたいそう評判がいい。同じアジアの人間として、もっと日本人が現地に出向いていい。
  「薬不足で、子供が次々亡くなる」という日本に伝えられるテレビ報道も正確ではなかった。確かに薬は絶対的に不足しているが、厳密に言えば使いたい種類、使いやすい剤形(例えばシロップ剤)の薬が不足しているということ。それに安全な水を潤沢に使えるだけで防げる感染症もある。
  難民キャンプの医療スタッフは国境なき医師団のように海外から派遣された専門家がいれば、パキスタン国内で現地採用された医師もいる。ここでは医療レベルが一定していない。これも医療需要に追いつかない遠因であろう。日本は難民支援、アフガン復興のために何ができるのか。方法は、山ほどあるはずだ。

ビジネスにする北欧

 それから、日本は外務省とNGOの仲がどうも良くないらしい。それをしり目に、デンマーク、オランダ、スウェーデンなど北欧各国は政府とNGOが手を組んで井戸を掘り、医薬品を非営利組織で供給する仕組みをつくり、実に手堅く活動していた。彼らは、「両者が協力した方が絶対うまくいく」と確信し、巧みに自分たちの貢献を世界に向けてPRしている点がうまい。ビジネスにもしっかり結びつけている。日本はかがみとするべきだろう
  それにしても、薬剤師の目は結構、役に立ったようだ。先のフィールドオフィサーS氏に坂本隊員が井戸水の水質検査結果を解説したら、大きな興味を示してくれた。調査報告として、必須(ひっす)医薬品の調達や日本製の緊急用高カロリー食品の活用など、具体的な七つの提言をまとめたが、これらに寄せる国連やWHO、ユニセフなど関係者が寄せる関心と今後への期待は思いのほか大きい。そう感じている。
  北東北の薬剤師たちがパキスタンを駆けめぐった二週間。これからが″本番”だ。

岩手県東和町・武政文彦

 

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