『社長のボヤキ』
2004.4.9
D.D.R事業のことを書こうと思ったら、U.N.D.Pから持って来た資料を全部読まなければ、とても書けないことが判った。
一旦、辞書を開き始めたら止まらない。とうとう午前中一杯と2時間程費やしてしまった。
今日は南西の風が強く曇りで、今にも雨が降りそうである。朝はあんなに晴れていたのに、天候の移り変りは速い。
イラクで日本人が3人、人質に取られて、日本自衛隊のサマワ撤退を要求している。政府は断固たる姿勢は打ち出しているものの、かなり動揺している模様である。どうなることやら。場合によっては、小泉内閣が危うくなる位の事件だ。報道によれば、夜間の事件らしい。我々でも、イスラマバード、カブールでは夜間外出は避けていたのに・・・。
慣れすぎの油断かな?夜は何が起こってもおかしくない。ちょっと心配ではあるが、どうしようもない。日本政府の正念場である。
話を戻そう。3月31日、カブール日本大使館 井上参事官、児玉書記官にお会いすることが出来、現況を教えていただいた。
現在、日本はこのD.D.R事業に於いては世界の国々の中で、United Kingdom、カナダと共に、重要なドナーとなっているのだそうだ。
大使館の中では、井上参事官、児玉書記官、工藤書記官は、D.D.R班と呼称されるのだそうである。
今を去ること1ヶ月半前に井上参事官は着任したそうで、前赴任地はクエートとお聞きした。
昨年10月24日、カルザイ宣言があり、カブール・クンドゥース・マザリシャリフにパイロットプロジェクトを置き、1000人位の試みを行った。
そして経過を研修し、それに沿ってモデルを作って作業をしている。
○ 問題点
コマンダーと呼ばれる軍閥の長を通して、当初やっていた。つまり金銭解決法である。
武装解除 A.兵に100ドル
B.武器150ドル
計250ドル1件あたり支払っていたが、どうもコマンダーが金銭をピンハネしているのが判った。これでは、軍閥解体ではなく、逆に軍閥を増長させているのと同じであるのも判った。従って、現在は金銭で武装解除を促すことは止めている。
○ 重要なこと
結論的に、明年、最終段階では10万人の武装解除をすることになっている。従って、D.D.R事業用の部隊を改めて作る必要性が出て来た。この部隊は、残る部隊を完全に解体することが任務であろう。
後に、アフガン国防省の正式組織として温存し、更なる武装解除が任務となるでしょう。国際社会としては、全ての軍閥の解体を心より願っている。
3月25日、アフガン国防省と国際社会双方で、理想と現実問題の事より、綱引きが行われた模様だが、カルザイの「国際社会化が望ましい」との発言より、D.D.Rが本格化することになった。
4月1・2日、独のベルリンで、アフガン支援会議があるが、日本からは緒方貞子さんが出席する。カルザイの宣言・通告が行われる筈で、この宣言・通告の結果で、多少変わってくることであろうが、アフガン国防省としは、具体的に詰めの作業に入っている。
6月末まで、40%−およそ40,000人の解除の予定。
1〜2週間前、ヘラートで17師団の解体を行った。
この解体、武装解除は非常に難しい問題を抱えている。なぜならば、師団同士がにらみ合っている訳で、片一方を解除すれば、もう一方が攻め込む力関係及び構造になっている為、双方のバランスを取りながら、解体・解除して行くことが要求される。
一番難しく、神経質になっているのは、大掛かりな軍閥が対立している、マザリシャリフ周辺である。徐々にバランスを取りながらやっていくことが必要。特に米軍とパキスタン軍が、タリバンに対する大規模な討伐戦争を行っているアフガン・パキスタン国境周辺の軍閥解体については、最も難問題と見ている。
この作業をうまくやるには、武装解除することによって、力の均衡が壊れて行かない様に、細心の注意を払うことが必要である。
現在、アフガンに存在すると云う師団数は、30師団以上、師団と云っても、マチマチで、数百人から1000人以上である。更に、一様ではないが、他に少人数の武装部隊40部隊が確認されている。
いくつかの部隊が妥協して、Down size(軍備縮小)を行いつつある色々な要素、バランスを加味して、6月末で20%、9月末で全体の60%を解体しなければならない。カルザイの選挙時には、正常な情況で選挙を行わせることが重要である。
武装及び、部隊解除後の兵士への再就職に関しては、一人一人の意見を尊重し、ANBP(アフガン新生プログラム)Integration planが、就労技術、就職など、社会復帰を取り計らうことにしている。
又、パイロットプロジェクトとして特異なのは、部隊解体をすると兵隊は良いのだが、司令官(Commander)に対する、特別措置(Commander
prgram)が必要となった。
例えば
@ 優秀なる司令官は−公務員の幹部に採用するとか、政治家に推薦するなど・・・
現在670人の司令官が確認されている中央政府のポストの数と見合わせて検討中である。
A 高齢になってしまった司令官で、リタイヤして安全保障を望む人もいる。協議中ではあるが、期限付きで金銭を渡して、安全保障を考えているケースもある。
B 670人と云われるコマンダーであるが、最終的には400人位とも踏んでいる。
軍閥を企業と考えるならば、企業転換することも案としてある。会社を作らせ、兵士を会社員とし、コマンダーは社長としたらどうか。
大抵、軍閥の組織は4人1組であるので、社長・専務・総務・営業とし、日本の企業で勉強したら、とも考えている。
それも復興事業が主になるので、土木作業をやらせ、公共工事の請負いなんてアイデアもある。兎に角、コマンダーのプライドを傷つけない様にしなければならない。
今のD.D.R事業を促進し、とりあえず治安を回復して、選挙(9月)まではどうにかしたい。可能性のある部隊は、来年の6月までは兎に角、解体したい。
A.N.B.Pはかなり続くし、Integrationも3年か、もっとかかる筈である。しかし、この事業は、2006年10月には終了させたい。
9月にカルザイの選挙、下院の選挙が同時選挙になる。もし、カルザイの選挙がうまく行われれば、治安も回復して行くだろう。無秩序の中からルールが生まれて来る筈である。
国民性から云って、武器回収は100%無理であろう。しっかりとした政権が誕生し、その政府が武器を取り締まる様になれれば最高である。9月までとりあえず6割。これが目標である。
地方の最近のニュースでは、W.F.Pに小銃が打ち込まれたり、1週間前にカブールでロケット弾が打ち込まれたり、まだまだ不穏な状態であると考える。
選挙前はテロリストの活動が活発化して来ることが容易に予想される。又、間近になると、治安は現在より悪くなると思われる。さらに、軍閥は政党を隠れミノにする可能性がある。早急に政党登録法を制定する必要がある。つまり、軍事力を持った政党は、政党ではないとの法律である。
カルザイは、6月の選挙予定をなぜ9月に引き伸ばしたのかと云うと、4・5・6月に段階的に行っているD.D.Rの第一フレーズが終了するからである。すでに5,500人が終了している。(パイロットプロジェクト)主に、カンダハルとバーミヤンがこれからである。
5,500人の武装解除のうち、3,300人がIntegrationの終了。
日本では、D.D.R事業に3,500万ドル供出している。国連では2003年2月に3,000万ドル、2004年3月には2,500万ドルを供出している。
総計で18,000万ドルもの金銭を投入している。
国連組織U.N.D.Pが、国連及び日本の資金をファンドし、A.N.B.Pに供出している。つまり、客観的な関係を保つためである。
世界銀行はさらに、兵士雇用促進用として、25%を当てがっている。
日本の組織としては、N.G.O(外務省関係?)は、学校の修復、草の根支援団体に資金を供出している。特に、大人の身体にまだなっていない少年兵の社会復帰が問題とされている。
伝統産業の復活とか、金属加工の技術、建築とか、色々、D.D.R後の兵士達のフォローとケアを考えているとのことでありました。
井上参事官、児玉書記官、長々とありがとうございました。
非常に親切でわかり易く話して呉れました。感謝!感謝!でありました。
カブール日本大使館に敬礼でありました。

アフガニスタン日本大使館前で
前列左より 中畑、井上参事官、筆者
中列左より 西谷、児玉書記官、鹿内、坂本
後列 ラシッド
B-10 82-mm

Crew 2
Maximum Range 4,500m(HE) 400m(AT)
Rate of Fire 3rds/min
「ANBP DDR Weapon Familiarization Guide」より

鹿内隊員 DDR 解除 武器集積地にて 谷二佐 DDR 解除 武器集積地にて
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