アフガン難民対策薬剤師団第一次調査隊 最終報告書 A

■ 謝辞 Acknowledgements


過去に目を閉ざす者は、結局現在にも盲目になる .....ワイツゼッカー元独大統領

How much freedom do you give up for security and safety? And if you give up too much, do you in the end have security and safety? ..... United Nations Secretary-General Kofi Annan

INTERNATIONAL PEACE ACADEMY SEMINAR ON 'THE RESPONSIBILITY TO PROTECT' 15 February 2002 


この報告書を読まれる方々にぜひご紹介したいことがある。
それは、国連難民高等弁務官事務所UNHCRの方々が私たちの調査に対して全面的な支援をしてくださったことである。
私たちアフガン難民対策薬剤師団第一次派遣隊の全隊員が無事に調査を行うことができたのは、疑いなくUNHCRの誠実で献身的な支援があったればこそである。
また、私たちの提言や調査報告がなんらかの形で実を結んだとしたら、それもまたまちがいなく羽生勇作氏をはじめとしたUNHCR現地職員の方々のおかげである。

また、パキスタンへの入国や現地大使館との接触には、日本薬剤師会の佐谷会長から頂戴した証明書がたいへん役に立った。あらためてお礼申し上げる。

この報告書で私たちは、難民キャンプの衛生環境等について薬剤師の立場からかなり辛辣な意見を述べている。しかしそれはUNHCRや各国NGO、政府関係者の対応を批判するためではない。アフガン難民、ひいてはアフガニスタン国民の居住環境が改善し、より健康的な生活をおくってほしいという私たちの願いからである。
そしてそのような結果を導くことが実はUNHCRも望んでいるはずであるという私たちの信念にもとづいて、包み隠さず述べたものだ。

提言を述べるからには、自分たちも日本の薬剤師の立場で行動を起こさなければならない。
そしてチャンスは巡ってきた。

  私たち人間は、過去から何かを学び、未来に生かす宿命を帯びた生き物だ。目的のためにはおうおうにして何かを犠牲にしてきたことがあるのも事実だ。
   しかし国連憲章で述べられたように「一層大きな自由の中で社会的進歩と生活水準の向上とを促進する」ために努力しつづけることが今ほど必要な時代はない。

  アフガン難民キャンプ調査に協力してくださった多くの方々にあらためて感謝し、「よりよき明日」のために行動を共にすることをお約束したい。

 アフガン難民対策薬剤師団第一次派遣隊
代表 町田容造


■ 調査目的

今回の渡航目的は、パキスタン国内に点在する『アフガン難民キャンプ』に対して、日本国薬剤師が「どの程度貢献出来得るか」につき下記の項目を調査することと若干の救援(支援)活動を行うことである。

1. 諸外国より、複雑なる経路・手順を経て入り込んだOTC薬及び医療用医薬品(あるいは模造品ないし偽造品)流通の現状(主にバザール)
(ア) 上記医薬品の効能表示。虚偽広告。医薬品の劣化状況。入手経路など。
(イ) 販売者・販売施設設備の現状
2. 井戸水及び市民に出回っている所の、いわゆる飲料水の水質。
3. 排泄物処理その他、保健衛生上諸問題。
4. 巷間騒がれている所の難民の栄養失調。
5. 混在する部族の特徴。
6. WHO、FIPとの連携について、その接点の模索。

■ 参加隊員

○町田容造・武政文彦・坂本賢・鹿内豊一(日薬非会員)      (○印:代表者)

■ 調査期間

2002年1月18日〜31日

■ 協力

社団法人日本薬剤師会
国連難民高等弁務官事務所UNHCR
   羽生勇作氏(UNHCRアフガン代表部イスラマバード連絡所長)
   森山毅氏(UNHCR Senior Program Officer)
   久保田弘信氏(フリーカメラマン)

■ 調査地域

パキスタン・イスラム共和国
○ パンジャブ州イスラマバード
○ 北西辺境州ペシャワール(コトカイ難民キャンプ・ニュージャロザイ難民キャンプ・ナッサルバールプレイス)
○ バローチスターン州クエッタ(チャマン難民キャンプ・ロガーニ難民キャンプ・モハメドキール難民キャンプ・ラティファバード難民キャンプ・サマリプレイス・ゴサバード及びパンチフティDistribution point)
※ ここで「プレイスplace」というのはUNHCRが難民キャンプと認めているわけではないエリアのことで難民と定住者とネイティブが混在している地域を指す)

■ 役割分担

分担項目

担当者

所掌任務

隊長

町田容造

行動に関するすべての指揮と情況掌握

総務(庶務・財務.渉外)

鹿内豊一

食糧・装備・機材他ロジスティックスの一切統括。金銭管理。関係者の渉外業務

危機管理

鹿内豊一

危険察知と隊長への通告

現地情報提供

久保田弘信

現地における体験情報の提供。写真撮影

調査記録

武政文彦

カメラ撮影、レポート作成

検査業務

坂本賢

検体採取および試験。データ管理

現地移動手段管理

武政文彦

国内航空便の手配と搭乗チケット管理

衛星携帯電話の管理

坂本賢

インマルサット・携帯電話の管理

隊員健康管理

武政文彦

ケガ、疾病の予防・プライマリケア

メール送受信管理

坂本賢

日報の日本へのメール送信

■1日のルーチンスケジュール

1. 起床、洗面、身支度
2. 朝食(その日の行動計画確認会議)
3. 朝礼・点呼・出発
4. 行動計画に従って調査・点検・支援業務
5. 昼食(午前行動の反省・午後行動の確認)
6. 行動計画に従って調査・点検・支援業務
7. 日没までの時間確認
8. 撤収・点検報告
9. 夕食(当日の反省と翌日の打ち合わせを兼ねて)
10. 自由時間(記録の整理)
11. 就寝

■ 行動上の留意点

1. 現地ではパキスタン国民やアフガン難民の文化・習慣などに反しないように行動する。
2. 自国の文化を振りかざすことは禁止。
3. 難民を自立させることを最初に考えるべし。
4. 我々が何かを調査していることを難民に気づかれることは論外。身に危険を感じるべし。
5. 井戸で水を採取しても現場で検査などは一切禁止。ホテルに帰ってから確認試験を行う。
6. 医薬品の譲渡に関しても慎重に行い誤った使用で事故が起こらないよう十分注意する。
7. 現地スタッフと良く話し合って最良の方法を考えること。
8. 現地での行動は、登山に準じたルールを適用する。すなわち「無理せず、あせらず、確実に」である。山頂アタック(現地での各種調査実施)に拘るあまり人命に危害が加わるようなことがあってはならない。

■ 全行程

表中敬称略

Date

Destination & Action

The person in charge

2002年1月18日

成田東京国際空港出発

Rashid Butt

2002年1月18日

イスラマバード空港到着

 

 

2002年1月19日

UNHCRアフガン代表部イスラマバード連絡所訪問・ブリーフィングおよび現状聴取

羽生勇作
森山毅

市内薬局調査

 

 

2002年1月20日

ペシャワールへ移動(移動時間3時間)

 

 

市内薬局調査

Nasir Medicose

2002年1月21日

UNHCRペシャワールサブオフィス訪問・ブリーフィングおよび現状聴取

Niaz Ahmad
Dr.Poonam Mazhar
Shahmaz Parveen

世界食料計画WFPの基地調査

Robert Muzwidzwa

在パキスタン日本大使館訪問現状聴取

岡井朝子

ナッサルバール・プレイスで地元児童のために文房具を贈呈

Aziz

2002年1月22日

◎コトカイ難民キャンプ調査(UNHCR車輌で往復移動時間6時間)

 

 

2002年1月23日

◎ニュージャロザイ難民キャンプ調査
WHOイスラマバード訪問

Peter J. Graaff

2002年1月24日

クエッタへPIA機で移動

板倉弘明

UNHCRクエッタサブオフィスを訪問・ブリーフィングおよび現状聴取

Mohamed Akbar HOSSAIN
斎藤かおり・Aria Masoom

サマリ地域訪問・予備調査

 

 

2002年1月25日

市内薬局調査

 

 

サマリ地域で住民支援活動

 

 

2002年1月26日

◎チャマン難民キャンプ調査(UNHCR車輌で往復移動時間5時間)

Aria Masoom
森山毅

2002年1月27日

UNHCRクエッタサブオフィス訪問・医薬品等を寄贈

Aria Masoom
森山毅

2002年1月28日

◎モハメドキール難民キャンプとラティファバード難民キャンプ調査(往復移動時間4時間)

税田芳三(さいたよしみ)
Seido Yamagami

2002年1月29日

クエッタ市内Distribution Pointの調査

税田芳三・斎藤かおり

イスラマバードへPIA機で移動

 

 

イスラマバード市内薬局調査

Nasir Majid

2002年1月30日

羽生勇作邸で懇談。

 

 

2002年1月31日

イスラマバード空港出発

 

 

2002年2月1日

成田東京国際空港到着

 

 

◎ 印の行程は、武装した地元兵6〜12名が我々を護衛しての危険と隣り合わせの調査だ。

 

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