アフガン難民対策薬剤師団第二次派遣隊報告書
アフガン難民対策薬剤師団第二次派遣隊報告書
Report of the fact-finding mission
By the Afghan Refugees Support Pharmacists Group
The Second Investigation
U.N.H.C.Rによるアフガニスタンへの帰還支援 2004年2月4日現在
(出典:U.N.H.C.R Field Office Kabul Briefing notes)
1 May 2004 |
アフガン難民対策薬剤師団第二次派遣隊 |
Original:Japanese |
隊 長 町田容造 |
目次 Contents
2.アフガニスタンの現況 The current situation in Afghanistan
付記 Appendices
Appendix U アフガン難民対策薬剤師団第2次派遣隊 隊員構成
T.序 Introduction
1.今から2年前の2002年1月、アフガン難民対策薬剤師団第1次派遣隊(町田容造隊長以下4名)は2週間にわたりパキスタン国境アフガン難民キャンプなど数箇所を問し、難民の生活状況、衛生環境を中心に調査を行った。今回、第1次派遣の結果を基にしてパキスタンならびにアフガニスタンにおける難民の帰還状況およびアフガニスタンの国家再建に関する現状を把握するため1週間にわたる現地調査を行った。(See→第1次派遣隊報告書)
2.イラク戦争後の国際情勢不安定という状況の中、調査スケジュール(See→Appendix U)のプラニングはもとより調査計画実行には大きな困難をともなった。しかし国際ロータリークラブのネットワークを活用し滞在計画を綿密に組み立て、さらには弘前、イスラマバード、カブールのロータリアン達の献身的な努力を得て、短期間ではあったが多くの成果を得ることができた。
3.今回も前回の調査同様、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)の協力を頂戴したが、それに加えて在アフガニスタン日本大使館、UNDP(国連開発計画)等のスタッフの絶大なる協力を仰ぐことができた。彼ら、彼女らの協力がなかったら今回の調査は不可能であったことは言うまでもない。
4.今回調査の成否を決める大きな鍵となったのは、第1次調査で得た提言(See→第1次派遣隊報告書)をどのようにすれば実現できるか、またそもそもそれがアフガン難民あるいはパキスタン、アフガニスタン両国民にとって本当に望ましいものであるかどうかを検証することであった。
5.調査に当たっては第1次派遣同様、薬剤師の視点で状況を観察し、考察を加えた。薬事・衛生に責任を負うプロフェッションとして日本の薬剤師が貢献できる分野を開拓することもわれわれの重要なミッションであるからだ。
6.この報告書には実現可能と考えられる具体策を結論部にまとめてある。単なる希望や自分たちだけの願望はできるだけ排除した。ここに記された提案をもとに今後アクションプラン策定をめざすわけだが、前回同様、多くの方々のご批判、ご意見を頂戴する中で、一歩でも二歩でもアフガニスタン再興が進むことを期待している。
U.アフガニスタンの現況 The current situation in Afghanistan
7.2001年9月11日の米国同時多発テロの勃発、テロリスト掃討を目的とした米国軍を中心するアフガニスタンへの軍事攻撃。それに伴う周辺国への300万人を超えるアフガン難民の流出。これら一連の戦乱を経てUNHCRによる難民の帰還プログラムが開始され現在に至っている。
8.UNHCRは帰還難民のためにシェルター計画を企画し、民間からの寄付を募りながら着々とプログラムを遂行している。戦禍で失われた家づくりは、仮設テント暮らしを終了させ日常的な生活基盤を確立するための最も基本的な事業である。
9.カブールにおいてUNHCRのフィリポ・グランディ氏によるブリーフィング、意見交換、カブール近郊60kmくらい離れた村で『シェルター計画』の確認。日本のNGOであるJENスタッフとのコミュニケーションを図ったがカブールでは物価が、最近とみに上昇していることが判明した。JENのアスカ氏の話では、「200ドルしていた家賃が突然、500ドルになったり、食事が10ドルで済んでいたのが、急に30ドルになったり大変です」とのことであった。
10.物価上昇の原因は、海外のNGOが大量に入って来ることと、支援が急激に行われるからとのことである。今回の調査で宿泊先としたインターコンチネンタルホテルにしても、9.11以降、各国メディアのスタッフが大量にカブールに入って来て、最大では、1部屋の値段ではなく、1人500ドルもしたという。朝・夕食付きとはいえ、給湯もなく、毛布1枚という状態である。
11. 現在カブール市内は停電がしょっちゅう発生している。復興の手順は、今の段階ではDDRが開始されたばかりであり、インフラ整備にまで手が回っていないのが現状である。電気、水道、通信、幹線道路、という基本的な部分はまだ緒についたばかりである。
12. 日本大使館アフガンDDR 班との面談を行った結果では、今年9月選挙まで、軍閥の司令官達及びテロリストが紛争を起こさなければ、DDR事業は円滑に進むであろうとの感触を得た。
13. 大使館員の説明によれば、アフガン中で武器放棄と回収を行っているが正直に出している所は少なく、かなりの銃が残っていると推測されている。また、司令官がピンハネをしたり、DDR プログラムで暫定的に設立された軍隊内部において換金しているとの情報があるが、本調査活動の過程で実際その現場を目撃した。
14. カブール市内では、一般人は銃を持てないこととなっている。しかし実状は無法地帯である。戦争状態にないパキスタンでも、地方軍閥が歴然とした政府に影響されないトライバルエリアが存在するし、およそ日本的な思考はあてはまらない。
V. 重要な発見 Key observations
15. DDR事業では2005年の最終段階では10万人の武装解除をすることになっている。従って、DDR 事業用の部隊を改めて作る必要性が出て来た。この部隊は、残る部隊を完全に解体することが任務であろう。その後アフガン国防省の正式組織として温存し、更なる武装解除が任務となるであろう。
16. 2004年3月25日、アフガン国防省と国際社会双方で、理想と現実問題の事より、綱引きが行われた模様だが、カルザイ大統領の「国際社会化が望ましい」との発言より、DDRが本格化することになった。
17. 4月1・2日、独のベルリンでアフガン支援会議があったが、日本からは緒方貞子氏が出席。カルザイ大統領の宣言・通告が行われ、その結果で多少変わってくることであろうが、アフガン国防省としは、具体的に詰めの作業に入っている。
6月末まで、40%−およそ40,000人の解除の予定。1〜2週間前、ヘラートで17師団の解体を行った。
18. この解体、武装解除は非常に難しい問題を抱えている。なぜならば、師団同士がにらみ合っている訳で、片一方を解除すれば、もう一方が攻め込む力関係及び構造になっている為、双方のバランスを取りながら、解体・解除して行くことが要求される。
一番難しく、神経質になっているのは、大掛かりな軍閥が対立している、マザリシャリフ周辺である。徐々にバランスを取りながらやっていくことが必要。特に米軍とパキスタン軍が、タリバンに対する大規模な討伐戦争を行っているアフガン・パキスタン国境周辺の軍閥解体については、最も難問題と見ている。
19.この作業を円滑に行う上で必要なことは、武装解除することによって力の均衡が崩れないように、細心の注意を払うことである。
現在、アフガニスタンに存在するといわれる師団数は、30師団以上、師団と云ってもバラつきがあり、数百人から1000人以上の規模までさまざまだ。更に、一様ではないが他に少人数の武装部隊40部隊が確認されている。
20. いくつかの部隊が妥協して、Down size(軍備縮小)を行いつつある色々な要素、バランスを加味して、6月末で20%、9月末で全体の60%を解体しなければならない。大統領選挙時には、正常な情況で選挙を行わせることが重要である。
21.武装及び、部隊解除後の兵士への再就職に関しては、一人一人の意見を尊重し、ANBPの1つDDR プロセスの仕上げであるR、すなわちReintegrationプロセスで、就労技術、就職など、社会復帰を取り計らうことにしている。
22. 又、パイロットプロジェクトとして特異なのは、部隊解体をすると兵隊は良いのだが、司令官(Commander)に対する特別措置(Commander program)が必要となった。 例えば
@ 優秀なる司令官は−公務員の幹部に採用するとか、政治家に推薦するなど。
現在670人の司令官が確認されている中央政府のポストの数と見合わせて検討中である。
A 高齢の司令官で退役して安全保障を望む人もいる。協議中ではあるが、期限付きで金銭を渡して、安全保障を考えているケースもある。
B 670人と云われるコマンダーであるが、最終的には400人位と踏んでいる。
23.軍閥を企業と考えるならば、企業転換することも案としてある。会社を作らせ、兵士を会社員とし、コマンダーは社長としたらどうかとのアイデアである。
概ね軍閥の組織は4人1組であるので、社長・専務・総務・営業とし、日本の企業で研修を積んではとも考えている。
それも復興事業が主になるので、土木作業をやらせ、公共工事の請負というアイデアもある。兎に角、コマンダーのプライドを傷つけない様にしなければならない。
24.問題点はコマンダーと呼ばれる軍閥の長を通して、当初はやっていた金銭解決法である。武装解除 A.兵に100ドル、B.武器150ドル、計250ドル1件あたり支払っていたが、どうもコマンダーが金銭をピンハネしているのが判った。これでは、軍閥解体ではなく、逆に軍閥を増長させているのと同じであるのが判った。従って、現在は金銭で武装解除を促すことは止めている。
25.今のDDR 事業を促進し、とりあえず治安を回復して、選挙(9月)まではどうにかしたい。可能性のある部隊は、来年の6月までは兎に角、解体したいとの意向である。
ANBPは長期に渡り続くしReintegrationも3年か、もっとかかる筈である。しかし、この事業は、2006年10月には終了させたいとのこと。
26. 9月に大統領の選挙、下院の選挙が同時選挙になる。もし、カルザイ大統領再選の選挙がうまく行われれば、治安も回復して行くだろう。無秩序の中からルールが生まれて来る筈である。
27.国民性から見て、武器回収は100%無理であろう。しっかりとした政権が誕生し、その政府が武器を取り締まる様になれれば最高である。9月までとりあえず6割。これが目標である。
地方の最近のニュースでは、WFPに小銃が打ち込まれたり、1週間前にカブールでロケット弾が打ち込まれたり、まだまだ不穏な状態であると考える。
28.選挙前はテロリストの活動が活発化して来ることが容易に予想される。又、間近になると、治安は現在より悪くなると思われる。さらに、軍閥は政党を隠れ蓑にする可能性がある。早急に政党登録法を制定する必要がある。つまり、軍事力を持った政党は、政党ではないとの法律である。
29.カルザイは、6月の選挙予定をなぜ9月に引き伸ばしたのかと云うと、4・5・6月に段階的に行っているDDRの第1ステージが終了するからである。すでに5,500人が終了している。(パイロットプロジェクト)主に、カンダハルとバーミヤンがこれからである。
5,500人の武装解除のうち、3,300人がReintegrationの終了。
30.日本では、DDR事業に3,600万ドル供出している。国連では2003年2月に3,000万ドル、2004年3月には2,500万ドルを供出している。
総計で18,000万ドルもの金銭を投入している。
31.UNDPが、国連及び日本の資金をファンドし、ANBPに供出している。つまり、客観的な関係を保つためである。
世界銀行はさらに、兵士雇用促進用として、25%を充当している。
32.日本の組織としては、NGO(外務省関係か?)は、学校の修復、草の根支援団体に資金を供出している。特に、大人の身体にまだなっていない少年兵の社会復帰が問題とされている。
伝統産業の復活とか、金属加工の技術、建築とか、色々、DDR後の兵士達のフォローとケアを考えているとのことである。
W. 結論 Conclusion
33.DDR プロセスの成功がアフガニスタン復興の鍵を握っている。DDR のうち武装解除、動員解除という2つのDに関しては実現性が高いが、もっとも重要なRすなわち社会復帰には多くの課題が残っている。
34.社会復帰には6つの選択肢がある。すなわち@地雷撤去、A農業、B職業訓練と雇用、C小規模ビジネスの機会、D賃金労働、E国防軍あるいは警察への従事である。これらすべてはいわゆる労働集約的な失業対策事業といえよう。しかしこれだけではアフガニスタンの経済力や公衆衛生力は十分な発展は難しい。
35.労働集約産業の復興定着に引き続いて、知的集約産業の興隆をめざす中長期的な開発ビジョンが求められる。知的集約産業のひとつで本派遣隊が狙っているのが、@麻薬栽培の合法化プロジェクトならびにA必須医薬品の国内生産体制である。
36.@の麻薬栽培の合法化プロジェクトとは、武器の購入代金や裏金づくりに利用されている麻薬栽培を合法化し、その品質を確保した上でアフガン産を標榜して販売する正式な体制をつくる事業である。以下にその利点を列挙する。
O全世界のあへん違法栽培の7割近くを占めるアフガニスタンの評価を大きく変える。
Oケシ栽培を取り仕切っている各地の軍閥を企業化し、武装解除と社会復帰を同時に達成する。
O農村の資金源として安易にあへん用のケシ栽培に携わることをコントロールし、他の農産物栽培とのバランスをとりながら農業復興を図る。
Oケシ栽培からモルヒネ精製までを一貫したシステムで行うことにより品質の高いモルヒネ製造を確立し、有力な輸出産品のステイタスを確保できる。
O適切な課税を施すことにより国家財政に寄与することができる。
37.Aの安価で品質の良い必須医薬品を自力で生産できることによる利益はたいへん大きなものである。以下にその利点を列挙する。
O資本の集積が効率的に行える。
O人材集積も可能となる。
O低所得の国民でも良質の医薬品を入手できる。
O消毒薬等を普及することにより公衆衛生の向上に寄与できる。
O必須医薬品をもとにした国家の医療政策を立案することが可能となる。
O外国製品の輸入に過度に頼る必要が少なくなり、国内での資産蓄積が容易となる。
O公衆衛生政策との連動により国民の健康状態が向上し、労働効率・生産効率が上昇する。
X.提案 Recommendations
38.次に記すことがこの報告書の提案となるものである:
1.結論に記したとおり、DDRはアフガニスタン復興にとって欠かせないプロセスである。これに対して疑問を挟む者はいない。その円滑な遂行は絶対に必要である。
2.DDRプロセス完成には最低、3年間を必要とする。並行して知的集約産業の開発が必要であり、その具体例が@麻薬の栽培と売買の合法化プロジェクトならびにA必須医薬品の国内生産体制の構築である。
3.麻薬栽培合法化は国際社会の大きな理解と協力がなければなしえない壮大なプロジェクトである。パイロットプロジェクトを立ち上げその成果をもとにシステムづくりを図ることとなる。
4.必須医薬品の国内生産体制の構築に合わせ、WHOが発行した必須医薬品プロジェクト作成のためのガイドラインGuideline for the Preparation of National Essential Drugs Projectを基本とした保健医療政策を国家として立案する必要がある。
5.第1次派遣隊の報告書で提言したとおり、感染症対策を中心とした公衆衛生対策が国家復興の基盤である。提案2はその具体化であり、このミッションを遂行する組織Commissionを設立し、計画と実行のために財政と人材を活用できるようにしておくべきである。
6.多くのアフガン人は、安定した平和な国づくりを望んでいる。急激な国際支援・復興景気により極端に富める者と貧しい者が生まれつつあることに懸念をいだいている。権益の偏りは部族間抗争を再燃させる火種ともなる。医薬品産業に関してもそのような富の偏りを回避しながら経済力を高め、あまねく安価で良質な医薬品を国中に安定供給できるよう育成することを原則とすべきであろう。
7.本派遣隊は、アフガニスタン復興を支援するため、助言サービスと技術的支援をこれからも継続して行う。
8.本提案に関してはその実現に関して関係機関とのディスカッションが不足している。さらなる討論と対話によりアフガニスタン支援の構想がより綿密かつ強固なものになるであろう。
Appendix T 略語表
略語 |
正式名称 |
訳語 |
DDR |
Disarmament, Demobilization and Reintegration |
元兵士の武装解除、動員解除及び社会復帰計画 |
UNHCR |
United Nations High Commissioner for Refugees |
国連難民高等弁務官事務所 |
UNDP |
United Nations Development Programme |
国連開発計画 |
WHO |
World Health Organization |
世界保健機関 |
WFP |
World Food Programme |
世界食糧計画 |
ANBP |
Afghanistan’s New Beginnings Programme |
アフガニスタン新生計画 |
JEN |
Japan Emergency NGOs |
ジェン |
U.N.H.C.R Afghanistan−Water Projects−2002&2003
(出典:U.N.H.C.R Field Office Kabul Briefing notes)
Appendix U
アフガン難民対策薬剤師団第2次派遣隊 隊員構成
町田 容造(56歳)
隊長 2004年7月〜国際ロータリー第2830地区アジア親善委員会委員長 (薬剤師)
西谷 洌(58歳)
隊員 青森県議員 弘前ロータリークラブ会員 (薬剤師)
中畑 肇(45歳)
隊員 弘前西ロータリークラブ会長
鹿内 豊一(57歳)
隊員 総務担当
坂本 賢(30歳)
隊長補佐 (薬剤師)
武政文彦(49歳)
日本国内事務局 後方支援担当 (薬剤師)
調査スケジュール
2004年 3/26(金) |
13:55 成田空港発 ↓(PK853) 21:50 イスラマバード空港着 *Islamabad Selena Hotel |
3/27(土) |
イスラマバード
17:30 イスラマバードロータリークラブ例会 [Islamabad Marriott Hotel] *Islamabad Selena Hotel |
3/28(日) |
イスラマバード
コスモコミュニティーセンター見学 (イスラマバードロータリークラブ シャキル・アンサリ氏) *Islamabad Selena Hotel |
3/29(月) |
13:30 イスラマバード発 ↓(PK249) 15:15 カブール空港着 *Inter Continental Hotel |
3/30(火) |
カブール
10:00 日本大使館アフガンDDRとの面談 (井上参事官・児玉書記官) *Inter Continental Hotel |
3/31(水) |
カブール
9:00 UNHCRブリーフィング (カブール事務所 フィリポ・グランディ代表) シェルター確認 *Inter Continental Hotel |
4/1(木) |
14:15 カブール空港発 ↓(PK252) 15:55 イスラマバード空港着 22:55 イスラマバード空港発 |
4/2(金) |
↓(PK852) 12:50 成田空港着 |
*宿泊地
協力者および組織(順不同・敬称略)Cooperator
Special thanks to
日本国外務省 井上勇一参事官 児玉千佳子二等書記官 工藤大介二等書記官
防衛庁 谷拓弥二佐
在日パキスタン大使館
在日アフガニスタン大使館
日本国連HCR協会 山本浩事務局長
UNHCR日本・韓国事務所広報室 大川宝作
博報堂 高島哲夫
(旅)アクロス
Filllipo Grndi(Chief of Mission UNHCR Afghanistan)
Shakil H Ansari(District Governor Nominee 2006~2007)
Osman Ali Saad Eldin(Qatar Charitable Society)
Sagheer Ahmed Khan(Finance officer of Save the Children ,Afghanistan)
Karima Farani(President of Rotary Club Kabul)
外崎奈津子(弘前西ロータリークラブ事務局)
樺ャ田アンド町田商会社員一同
技術レポート Technical Report
T. はじめに Introduction
1. DDRを薬剤師の視点で見つめることにより2つのプロジェクトが想起された。1つは麻薬栽培合法化プロジェクトであり、もうひとつは必須医薬品国内生産体制プロジェクトである。麻薬栽培に関して国際的には英国が監視の責任を担ってきたが、十分な成果を挙げてはいない。他方、必須医薬品に関してはWHOが全世界レベルで提唱し、各国に導入を呼びかけているが少なくともアフガニスタンにおいては未だ実現には至っていない。
2. 両プロジェクトとも、一見すると困難と思われがちな課題を薬剤師の視点とネットワークの活用で突破break throughしようとするものである。
もちろん薬剤師だけで達成できないことも明らかであり、各分野の専門家が協働して対処することが欠かせない。
3. プロジェクトは極めて政治的な課題を薬学的に解決しようとするものであり、前例がない事業となるのは明らかだ。成功への道のりは平坦ではないが、第2次大戦後の日本が培ったさまざまなノウハウと育まれた人材を活用することで不可能を可能とすることができるであろう。
U. 麻薬栽培合法化プロジェクト Opium Culture Legalization Project
4. 3000トンを越すあへん用のけし栽培はこれまでテロリスト等の資金源となっており、あへんからヘロインへの精製により多くの乱用者を生み出してきたためアフガニスタンは国際社会から非難を受けてきた。しかしこのプロジェクトは逆転の発想で、世界最大の麻薬違法栽培国を世界最大の医療用麻薬生産国にしようというものである。
5. したがってプロジェクトはカルザイ大統領のイニシアティブで行うべきであり、国家が栽培管理と品質保証を行うものである。
6. プロジェクトを立ち上げるには、日本による以下の支援が必要となる。
-
たばこ栽培に関してかつて日本専売公社が培った栽培管理法の活用
-
現地の情勢に明るい製薬企業によるプラント建設の技術指導
-
同じく生産技術の移転
-
日本国内の薬科大学への有能なアフガニスタン人の招聘と教育
-
技術指導のために薬剤師ら専門家の現地への派遣
-
政府の資金援助
7. アフガニスタン国家に必要とされることは以下の通りである。
-
治安維持
-
日本からの技術者の受け入れ。
-
医薬品政策の立案
-
精製モルヒネ製剤の品質保証
8. 日本政府および政府機関に求められることは以下の通りである。
-
資金援助
-
省庁の枠を超えた支援体制づくり
-
日本企業の復興支援資金等に係る税制面の配慮
-
アフガニスタンからの留学生の就学・滞在費用に関する資金援助
9. 国際機関ならびにNGO団体に求められることは以下の通りである。
-
NGOならびに国連機関の既存の各プログラムとの連動・調整
-
情報交換
これら組織の中には薬剤師の国際組織であるFIP(国際薬剤師薬学連合)も含まれる。FIPは現在WHOと全世界で協力体制を堅持しており、当該地域にもFIP−WHO西太平洋フォーラムが構築され、その副会長は日本薬剤師会幹部が務めている。
U 必須医薬品国内生産体制プロジェクト Essential Drugs Domestic Production Project
10. 必須医薬品に関してWHOはモデルリストを示しており、またその品目選定のためのガイドラインも提示している。そのステップは次のような順序である。
@国の政策に具体的助言を与える保健医療専門家の委員会を設立する。
A医薬品はできるだけ一般名を使用する。
B合理的医薬品使用のための必須医薬品に付属した標準処方集(formulary)を準備する。
C医薬品の品質を保証する検定や規制を定める。
D医薬品の分類ごとに必要な専門知識のレベルを決定しておく。
E製造から使用までの供給・保管・流通の効率的管理に政府が介入する。
F医薬品の使用実態を把握するために使用実態調査を実施する。
G医薬品の臨床試験をガイドラインに沿って行う。そのための研究施設とトレーニングを受けた職員を養成する。
H国家医薬品管理局を設立し、医薬品調達に責任を有する公的・私的組織と相互に連携する。
V 資料
1 アフガニスタンのけし生産状況
けしの生産 |
出典: 国際連合食糧農業機関(FAO)日本事務所プレスリリース(2003 年8 月22 日)
2 違法けし栽培と密輸ルートの現況
Despite the armed intervention and the political change in Afghanistan and the fight against terror, illicit cultivation of and trafficking in opiates has grown which may result in more political instability. Opium cultivation in Afghanistan continued on an even larger scale in 2003. Drug crop cultivation has also resumed in Pakistan, mainly in non-traditional poppy growing areas. |
出典: International Narcotics Control Board ANNUAL REPORT (((3 March 2004)
3 アフガニスタンの違法けし栽培取締り停滞に関する英国の酷評
Friday May 7, 1:36 AM Britain said it was dissatisfied with the Afghan government's efforts to eradicate drugs from the country, one of the world's largest opium producers.The results of a campaign by President Hamid Karzai's administration to eradicate the poppies used to make opium "were not what we hoped for," British Foreign Office minister Bill Rammell told reporters in Kabul.The Afghan government's efforts have been "patchy," said the minister, who is on a three-day visit to the war-torn country. Britain is leading international efforts to eradicate Afghanistan's poppy crop, with the United Nations saying this year's harvest was expected to be the largest yet. Rammell said some key figures engaged in the trade must be arrested and prosecuted, but did not give details. Reacting to his remarks, Interior Minister Ali Ahmad Jalali said Afghanistan had "lots of problems" and needed to first build "capacity" to fight the illicit drug industry. "Afghanistan has a very limited capacity to deal with this significant increased of poppy cultivation and also drug trafficking," he told AFP. " Now it is the beginning of a major effort of eradication. One cannot expect that at the beginning of this new project we will be able to make a major impact. However we are moving in the right direction," Jalali said. " We are trying, we are learning from past experiences and since we are building these units (anti-narcotic force) I think in the future we will do better," he said. "We depend a lot on international help to respond to this challenge for this problem," Jalali said. Rammell said, "drug money finances organized crime and extremist activities. The drugs trade threatens security and stability in Afghanistan and beyond." Jalali for his part admitted that money flowing into the country through the drug trade was helping "terrorist activity" as well as regional warlords maintaining private armies. " Drugs also fund the factional armies, terrorism, and organized crime," Jalali said. Karzai last month called for a "jihad", or holy war, against the growing narcotics trade, saying it threatened the stability of the government. The Asian Development Bank on Wednesday warned that security concerns fueled by the booming drugs trade were hampering Afghan reconstruction. UN officials have also said the industry threatens to turn the country into a failed "narco-state". " Afghanistan is the source of over 95 percent of heroin used in the UK... Afghanistan's drugs problem is our problem too," Rammell said in a statement issued by the British embassy late Wednesday. The nationwide anti-drug campaign started in April when farmers in southern and eastern parts had already harvested the corps. Rammell said Kabul had a key role to play in eradicating the cultivation but could not do it alone. " We are facing enormous challenges, but the thing that makes me confident is that there is an enormous political support (in the government)," he said. |
出典:AFPニュース Friday May 7, 1:36 AM 2004
4 保健医療へのNGO提言
▼分野別分科会アピール(保健医療) |
出典: アフガニスタン復興NGO東京会議(2001年12月)
5 紛争予防・平和構築へのNGO提言
▼分野別分科会アピール(紛争予防・平和構築) |
出典: アフガニスタン復興NGO東京会議(2001年12月)
6 テロリストと麻薬栽培に対する国際社会の認識
タリバーンが、1961年の麻薬に関する単一条約、1971年の向精神薬に関する条約、1988年の麻薬及び向精神薬の不正取引の防止に関する国際連合条約及び1998年の麻薬に関する国際連合総会の第20回特別会期の約束(国際連合薬物統制計画と密接に活動することを含む。)に従い行動することの重要性に留意し、 タリバーンが、あへんの製造に税を課すことにより不法なあへんの栽培から直接に利益を受けていること並びにそのようなあへんの加工及び取引から間接に利益を受けていることに留意し、それらの実質的な資金が、テロリストをかくまうタリバーンの能力を強化していることを認識し、 |
出典: 国連安保理決議1333
7 タリバンがけし栽培をコントロールしてきた過去の歴史
国連麻薬統制計画(UNDCP)の報告によれば、2000年の世界の違法なあへんの生産量(推計)は、ピークとなった前年の約5,700トンから約4,700トンに減少した。これは、主要生産国であるアフガニスタンでの悪天候とタリバン(注)の禁止令に基づく作付面積の縮小により、あへんの生産量(推計)が前年比で28%減少したことに起因する。 (注) タリバンとは、アフガニスタンを実効支配するイスラム原理主義勢力。2000年7月、タリバンの最高指導者オマル師が厳しい罰則を含むけし栽培の全面禁止を布告した。 |
出典: 世界税関機構(WCO)の資料等(2000年)
U.N.H.C.R アフガニスタンシェルター計画 2004年1月現在
(出典:U.N.H.C.R Field Office Kabul Briefing notes)