無登録農薬についての緊急情報
無登録農薬についての緊急情報
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薬剤師からみた「ナフサク」とは・・・・。(2002/09/09)
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薬剤師からみた「ナフサク」とは・・・・。(続編) (2002/09/12)
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社長のボヤキ(2002/09/15〜随時更新)
無登録農薬販売使用問題の経過
2002年 |
山形県にて「農薬取締法」「毒物及び劇物取締法」違反の容疑で2名が逮捕された。 |
8月12日 |
東京の業者が山形県以外の業者にも販売していたことが判明する。 |
13日 |
農水省が都道府県に対し、販売業者等に農薬取締法に基づく立ち入り検査を指導した。 |
22日 |
全農青森県本部が各農協を通じて行った調査で使用例がなかったことを発表した。 |
23日 |
青森県では山形県の業者から農薬を買ったとされる県内の販売業者と農家に対しての立ち入り調査を始めた。 |
27日 |
青森県は、無登録農薬流通で緊急対策会議を開催する。
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29日 |
板柳町がりんご緊急対策を発表する。
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30日 |
無登録農薬使用りんごの全量廃棄処分することを関係市町村が発表する。
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9月 2日 |
弊社ボランティア活動費を、板柳町に残留農薬分析費用の一部として寄付する。 |
3日 |
青森県は、二薬剤以外にも、無登録の落果防止剤「ナフサク」が流通していることを公表する。 |
4日 |
青森県無登録農薬緊急対策会議(2回目)を 開催する。
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6日 |
板柳町の無登録農薬購入者のりんご検体を青森県薬剤師会衛生検査センターに搬入する。
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8日 |
無登録農薬購入者が販売先に対して損害賠償を請求することを決める。 |
9日 |
青森県がりんご生産農家およそ20,000戸に対して立ち入り調査を開始することを発表する。
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日本一のリンゴを救え
雪印の汚染牛乳問題、牛肉偽装問題等が新聞紙上を賑わしていて、「食」への安全性がさけばれている昨今。無登録農薬使用問題が発生しました。それは、発がん性があるということから農薬としての使用が禁止された「ダイホルタン」「プリクトラン」などが販売され使用されたという問題です。
青森県内でも、数十戸の農家が使用したとのことです。本県は日本一のりんごの産地であり、県内の農家、関係者の不安は想像を絶するものがあります。
各市町村、関係機関では、散布園地のりんごの全量廃棄処分、近隣園地も果実の残留農薬サンプル検査をするなどの緊急対策を打ち出しました。
当社としても、農薬、肥料等の販売を行なっており、又、農家の方々にもご利用いただいているサカエ薬局がありますので、とても無関心ではいられません。
そこで今、当社としては、「何をすべきか?」、薬剤師として「何ができるか?」を真剣に考えました。危機管理、特に薬物の管理に関しては専門分野である薬剤師として、簡易な分析法を見つけて残留農薬の検査をできないか調査しましたが、簡易な分析法はないということでした。いろいろ調べている中で、(社)青森県薬剤師会衛生検査センターにこの一連の主旨と実情を相談したところ、検体検査に休日返上で協力していただけるとの心強い快諾を得る事ができました。
又、町田商会では、ボランティアで、関係市町村、農家等から分析依頼があった場合は、「無登録農薬残留分析依頼の対応について」(下記)を作成し迅速に対応しております。
あわせて、弊社内に予算化していた企業ボランティア活動費(通称アフガン難民支援予算)の一部を今回、対応要請があった社長の生家がある板柳町に対し寄贈させていただくことにいたしました。額はおよそ100検体分の検査費用に相当するものです。
このような社会的危機打開のため、薬剤師職能が微力ながらも役立てばとの思いでおります。
※ダイホルタン、プリクトランの文字をクリックしていただければ、薬剤説明のページへ移動します。
「無登録農薬残留分析依頼の対応について」・ 依頼者の住所・氏名・電話の聴取、散布者なのかその周縁者なのか聴取。 ・その依頼者は関係者(県市町村・農協)に当該農薬の使用者、又は購入者もしくは、散布地周縁者として、確認されているのか?
尚、詳細については、小田桐部長・工藤部長までお問い合わせ下さい。 樺ャ田アンド町田商会 |
※上記資料 「ダイホルタン(カプタホール)とは」、「プリクトラン(シヘキサチン)とは」、「NAA(α−ナフタリン酢酸ナトリウム)とは」は、農林水産省 http://www.maff.go.jp から引用しました。
薬剤師からみた「ナフサク」とは...。
冷静に考えてみよう
青森県は9月3日付けで"ダイホルタン、プリクトラン"以外にも無登録落果防止剤「ナフサク」(正式名称:α−ナフタリン酢酸ナトリウム)が流通していることを公表し、使用リンゴは全て廃棄することを使用農家に勧めた。さらに使用していない由の誓約書を提出することを義務付けた。
この一連の処置により"ダイホルタン、プリクトラン、ナフサク"は、同列無登録農薬とみなされたと私どもは理解している。
果たして、この三剤は同列とみとめて良いのか、化学物質の活用に関わることの多い薬剤師の視点から若干の意見を述べてみたい。
ナフサクも悪玉か?
特に、上記三剤のいずれかを散布したリンゴは全量廃棄処分とのことであるので穏やかではない。隣接した園地の被害も考えられることより、個人同士の補償問題も容易に想像できるし、昨年のリンゴの産地安から、天候不順、そして今回の無登録農薬問題、農家はダブル.トリプルのパンチを受けているとしか思えない。
二剤については、7月30日山形県に使用された報告を聞き、その有害性が"大変なことになった"とは思っていたが、本県発表のナフサクについては当時よりかなり悪玉あつかいにするのを当社としては警戒をしていたのが実情である。
その理由は、表1にもあるとおり、ナフサクは製造会社が採算性の低さを理由に市場から撤退させた製品だったからだ
"ナフサク"は農薬なのだろうか。
県内で流通した無登録農薬の相違点 |
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商品名 |
ダイホルタン |
プリクトラン |
ナフサク |
用途 |
殺菌剤 |
殺虫剤(ダニ剤) |
植物成長調整剤(落果防止剤) |
登録失効日 |
1989年12月25日 |
1987年12月3日 |
1976年9月30日 |
失効理由 |
発がん性が認められる |
催奇形性を否定できない |
採算性の理由からメーカーが再登録申請せず |
人畜毒性など |
魚毒性C類 |
劇物、魚毒性C類 |
魚毒性A類 |
リンゴの規格基準 |
不検出 |
不検出 |
基準未設定 |
※魚毒性A類=通常の使用で問題がない、 魚毒性C類=魚介類に強い影響を及ぼす |
(出典:9月8日付『陸奥新報』の記事より転載)
有害性の検討をお座なりにして、結論を急がなかったか?
ナフサクは我々薬剤師からみると試薬という認識である。以前それが、リンゴ、ナシ、メロンの落果防止剤、植物成長調整剤に応用されたと考えるべきであろう。ただ農薬登録から1976年にメーカーの経済的理由(農薬登録料 数億円)と汎用リンゴ スターキングの減少から使用量が減り、経済原理で消滅の道を辿ったという認識である。
有害性を検討してみた。人体に対する毒性はLD50(注1) 1000mg/kgで、もし自殺をもくろみ服毒するならば体重×1g程の原液を一気に服用しなければならない。発癌性、神経麻痺、さらに催奇性も現在のところ問題視されていない。薬物学的には普通薬物とみるべきが妥当であろう。
従って、植物成長剤として応用しているのであろう。米国の資料(ホームページ)(注2)
をみても一目瞭然である。
注1 LD50(エルディフィフティ) : 致死作用の50%発現率を示す量
注2 http://www.ipm.ucdavis.edu/PMG/r4900111.html (英文)
広辞苑の定義*
* 農業に使う薬品、作物にかける消毒薬,殺虫剤
ナフサクと木酢
この剤の仲間には、木酢が挙げられる。肥料登録もないし農薬登録もない。
木酢はリンゴに使われたり、水稲に使用されたり用途は巾広い。農家の知恵を絞った天然の化学合成品の傑作と云えないであろうか。
農作物に使用すれば全て農薬か肥料との視点とするならば、人糞、堆肥もその他諸々全て農薬との範疇にはいるのではなかろうか。不幸にもナフサクは工業薬品・試薬の登録があったことが騒ぎを倍増させていると思われる。
農家は作物の良質多収をもくろむ、規制され、いわゆる管理された農業は青森県にはそぐわないのかも知れない。常に何かを工夫しなければ他県ないし日本以外の国とは競争しなければ勝てないことを自然に認識していると思われる。
本当に怖いのは自分で考えるのをやめること
今回のナフサクについては、農家の工夫と知恵から発した事であると心から思っている。
この調子で全てを片づけるのなら、管理社会のマニュアル以外の方法は取れなくなると思われる。さらに、特に消費者の疑問に答えるのであれば、徹底して情報を開示することが必要である。しかしながら、あやふやな情報を開示すると、正当な競争は難しくなることも考えられると思われる。
ナフサクを農薬と登録していないから、悪玉と一方的に決めつけるのは早計なのではなかろうか・・・・。人間で云う所の、サプリメントとすると判り易いのかも知れない。
いずれにせよ農水省やお役所が認めたものならすべて安全とか、それ以外は試して見る価値もないと考えること、つまり思考停止がもっとも怖いことであると知るべきだ。
ご意見、ご感想をお寄せください。
ここに掲げさせていただいた意見に対して、皆さんからのご意見、ご感想を下記のメールアドレスにお寄せください。頂戴したご意見についてはプライバシーに配慮し、今後の参考にさせていただきます。
メールアドレス:agri-info@machida2.co.jp
文責 株式会社町田アンド町田商会 町田容造
薬剤師からみた「ナフサク」とは...。 (続編)
ナフサクは異なった対応で(青森県)
青森県農林水産部は9月11日、ナフサクに関し散布樹以外のリンゴは残留農薬検査で安全性を確認後に出荷を認める方針を打ち出した。ダイホルタンやプリクトランと異なる対応を示したことになる。
この件に関して、われわれは、「冷静に考えてみよう」という薬剤師なりの意見をホームページ上で提案してきたところである。(詳しくは、こちらを参照)
採算性がよくないという理由で製造企業が市場から撤退させた製品であるナフサクを、他の有害性が指摘されている二剤と同列に扱うのはいかがなものかという趣旨であった。
今回の県の対応はわれわれの意見を基本的に取り入れた形とはなっている。
今一度、安全性と収量を考える
リンゴに限らず、農作物と肥料、農薬とは今後とも深い関係を持ち続けるであろう。安全性を第一に考えあらゆる農薬等を拒否した農業生産を行うのか、それとも収量や生産効率を重視して、ある程度の農薬を今後とも使い続けるのか。これは生産者のみならず、消費者も真剣に考えるべき問題であろう。
また、農薬の残留性(残効性)を考えると、いわゆる環境ホルモンの問題も関係してくるため、これら今に生きるわれわれだけの問題ではない。次の世代やもっと先の世代にも少なからぬ影響を及ぼす問題であろう。
難しいテーマであるが、避けては通れない。特にリンゴをはじめとした農業県である青森県はもちろんのことだ。
あらためて、「本当に怖いのは自分で考えるのをやめること」
今の日本で餓死者が出ることはめったにない。しかしほんの50年前までは冷害、凶作で食べ物がない時代を幾度となく経験していたのは紛れもない事実である。たくさんの農作物を収穫するため、農家は知恵をしぼってきた。木酢しかり、合鴨しかり。それがいつのまにか、「専門家」にお任せする風潮になってきた。
安全性も収量を上げる工夫も、すべて「専門家」でいいのだろうか。あらためて皆さんに問いたい。
参考資料
薬剤師からみた「ナフサク」とは...。 (平成14年9月9日掲載)
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